へもか

憶測以上の確定未満

鳩サブレー

八月中旬に買った十枚の鳩サブレーをついに今日食べ終えてしまった。

いわゆる大事にいただきますねをありのまま実行したといえる。このひと月半、部屋に帰ったら鳩サブレーを食べてもいいな、と思わなかった日はない。実際に食べるかどうかではなく、鳩サブレーを食べられるという可能性を手中に収めている実感が私を支えた。

ザクッとかじればほろほろとした小片に砕け、ふんだんに含まれたバターと粗い粒の砂糖の存在をその砕けかたから知らしめる。堂々たるものだ。歯応えをたのしみつつ噛みくだくとジュワンとしたバターの旨みに香ばしさがひろがる。

そういえば面積の大きなおなかの部分と狭まっている尾の部分では火のとおりがちがうので食感が異なるのではないか。意識はしていなかったが部位による変化を食べ進めながら体験しているはずだ。鳩サブレー、どこまで人をしあわせにする気なんだ。

ちなみに私はおなかの部分が好きです。

ひとり、鎌倉を自転車で巡っていたときも鳩サブレーを買って食べた。このカロリーでこのあともしっかり走れるな、と思った。

いまも変わらず鳩サブレーで走っているのだ。ありがとう鳩サブレー

 

椅子、うなづき、つけ麺、主観

七月二十日

私の席のうしろの人が椅子を机にいれないので、私が通るためにその人の椅子を机にしまっている。一日7,8回はしまっている。まあこんなことができていなくても、それを補ってあまりある才能の持ち主ではある。そういう意味では私は椅子をしまうしか脳がないと言える。しまうたびに劣等感がふつふつと生まれる。

 

七月二十一日

上司がドタキャンした代理で夏の挨拶まわりへ。代理では何の誠意も示せないと思うが意味はあるのか。基本的には客先の偉い人と弊社の偉い人が話しているのを、ふんふんと聞いているだけである。

自分のうなづきパターンについて考えていた。

細かくたくさんうなづく:「ハイハイハイハイ、あるあるあるある」。
大きくゆっくりうなづく:「いやまったくそのとおりです」。
俯いたまま小さくカクカクとうなづく:「分かります、分かりますけどそれが是とされない浮世のままならなさですよね」。

肯定だけどそれぞれニュアンスが微妙に異なる。フィジカルでリアルなコミュニケーションは情報が多い。

 

八月七日

脚を閉じて座る努力ができなったら女はおわりだな。

 

八月二十四日

妹に勧められたセブンイレブンのとみ田の冷やしつけ麺がうまい。これは真似してスープジャーをつかってつけ麺弁当をやるしかない。

 

九月二日

「『シェルパ』と道の人類学」を読んでいる。歩くことに表れる文化や歩くことの影響を考えるのはおもしろい。

これもそうだけど「『間合い』とは何か: 二人称的身体論」でも指摘されていたとおり、主体性っていままでの研究ではほんとに対象から外されていたんだな。主観を除いた客観的な事実こそ正確だと、それだけが正しい手法だと自分も疑っていなかったけど、結局生きている人間にとって事実ってそんな単純だろうか。

撮りつづけて五年になる"外からみる台所"も百件を超えた"閉店植物"も、なにかしらかのまとめを組み立てたいのだけど、そのときはそこに主観的な意識も恐れず扱ってみたい。研究の仕方を研究しないといけないのか。

黒ごまキーマカレー

煎りたての香ばしい黒ごまをたっぷりいれたキーマカレーが食べたい、食べたいのでつくります。

買ってきた黒ごまが60g、半分の30gをおもむろにスキレット*1に流しこんで弱火でサラサラと揺するがなにも起きない。スキレットが熱くなるまで黒ごまは静かなので、パウダースパイスと塩を小皿に量りいれていく。

ときどきスキレットをゆする。持ち手が熱い。

たまねぎを5mm角くらいのあらみじんに刻む。キーマカレーにおいてたまねぎは具材。自信をもって粗く刻む。そういえばパウダースパイスに辛さのあるスパイスがないな。青唐辛子を斜めにスライスしてたまねぎと一緒にしておく。

ほうれんそうをみじんぎりにする。

すっかり香ばしく煎られた黒ごまはミルサーでチャッチャッと2回くらいまわしてすりごまにする。

これで材料は揃った。スパイスをつかうカレーは材料を揃えてから加熱作業にうつったほうが良い。水分を加えてボーッと煮る段階にいたるまでは結構スピーディーなので。

中華鍋に油とホールのクミンとマスタードシードをいれ弱火にかける。油はなんでもいいけど、半分くらいは胡麻油にしてみようかな。ごまキーマだし。

クミンがシューシュー、マスタードシードがパチパチ。それぞれいいはじめたら冷蔵庫からにんにくとしょうがのすりおろしチューブを取りだしブンと絞りいれる。

にんにくとしょうがの香りが部屋中にひろがり、「ハイ、完成です」と言いたくなるくらい仕上がったところでたまねぎと青唐辛子をドサッと加えて鍋底からよく混ぜて油でテカテカにする。

まあたいして炒めなくていい。スペースを空けてあげて豚挽肉をドンといれる。なぜたまねぎをあまり炒めないか。1. 食感をのこしたいから、2. おなかがすいたから。

挽肉はなるべくさわらず私はハンバーグを焼いているんだという気持ちで放っておくとよいとおもう。洗いものをしたり、たまねぎのアチャールやズッキーニのマスタードマリネをつくったりしていればよい。焦げた音がしてきたら満を持してひっくりかえす。

これもまた放置。

側面に赤色の肉が見えなくなったところで、はじめて肉をポロポロと崩していく。なぜか。このほうが肉から水分が失われにくい(気がする)。どちらにせよ肉汁が染みだしているが、透明に澄んでくるまで肉をキッチリ炒めること。これは陳建一さんが言っていたので自明な解です。

肉が炒まったら火を弱めて、黒ごまとパウダースパイスと塩を振りいれる。スパイスを焦がさないように、しかし数分かけて炒めて火を通す。

刻んだほうれんそうもいれて混ざったら水を100mlほど加えて10分ほど煮る。いちおう味見をして塩が足りているか、確認しておく。

器にごはんを盛ってアチャールやマリネといっしょにカレーをよそってスプラウトをあしらえば完成です。

 

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スプラウトは軸が白いので、単純に緑の野菜を飾るよりキーマの黒さを引きたててくれます。

辛さは青唐辛子だけなのでずいぶんスッキリとした辛さで、全面に出てくるのは黒ごまの濃厚な香ばしさとコク。豚肉の旨みと黒ごまの相性を噛みしめながら、酸っぱ辛いアチャールなんかを混ぜつついただくと、味と食感に変化が出ておもしろいとおもいます。

 

 

材料

スタータースパイス

・ クミン(ホール): 小1
マスタードシード(ホール): 小0.5
・ 油: 大1.5くらい

具材

・ にんにく(すりおろし): 1片
・ しょうが(すりおろし): 1片
・ たまねぎ(あらみじん): 1玉
・ 青唐辛子(スライス): 1本

・ 豚挽肉: 300g

・ ほうれんそう(みじんぎり): 1/2束
・ 水:100ml

パウダースパイス

ターメリック: 小0.5
ナツメグ: 小0.5
クローブ: 小0.5
・ クミン: 小2
コリアンダー: 小2
・ 黒ごま: 30g
・ 塩: 小1弱

 

*1:部屋に焙烙がないため

丁寧なやきそばパンをつくる

どうにも垢抜けないパン、やきそばパン。

コッペパンにやきそば挟んじゃうんだからそりゃ垢抜けないよね。しかし考えてみたら作るのはすごい手間じゃないだろうか。

妹を誘って作ってみることにした。

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スーパーで買いだし、妹の部屋へ向かう。

妹が薄力粉を買うので妹の部屋にはないんだな、と思ったらすでに部屋に一袋ありなぜ買ったのかは不明。

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発酵時間もあり長くかかりそうなコッペパンからはじめる。

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量った強力粉に牛乳とバターとドライイーストと砂糖を加えて混ぜる。

参考にしたレシピには「捏ねずにできる」と書かれていたけど、やはり混ぜるだけでは無理があったので捏ねた。

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ここで一旦味噌汁を温めます(妹がまだ朝ごはんも食べていなかったので)。

パン生地は皿に移して捏ねながらボウルを中華麺にパス。なぜならボウルがひとつしかなかったから! 買って!

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中華麺はすでに実績のある妹が担当。

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「これってひとまとまり?」と妹が聞いてくるのだけど、きわどい。
中華麺はスベスベになるまで捏ねるというよりまとまったら寝かせればいいらしい。

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レンジでむりやりチンして発酵させたパン生地がこちら。

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妹に撮られるパン生地。なぜなら一次発酵後のパン生地はかわいい。

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六十グラムずつ、六等分に切り分けた。大きさに迷ったが膨らむと信じて。

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円形に広げたら上下からパタンパタンと中心へ向けて折りたたみ、

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つなぎめをつまんで、

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まないたでこするようになじませて成形終了。

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二二〇度に余熱したオーブンで十分焼成

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中華麺、踏まずにいけるらしい。

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体重をかけて中華麺をぐいぐい伸ばす。

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オーブンから良い香りがしてきて、

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めちゃこぶりなコッペパンが焼きあがりました。

小さいやきそばパンなんてのはしみったれていて粋じゃないねい、と妹と話していたのに。やきそばパンは部活後の男子高校生も満足させるガッツリ食べごたえがあってほしい。

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焼けてしまったものは焼けてしまったので、中華麺を切る。

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いいかんじに切れた!

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さっと茹でてついにやきそばへ!

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ラードを溶かした中華鍋で野菜を炒めてソースを加える。
ソースはウスターと醤油を二対一で使用。これがおいしかった。

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茹であがったら太くなってしまった麺を加えてやきそばができました!

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やっとぜんぶ揃いました! ここまで約三時間! 長かった!

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これが、丁寧なやきそばパン!

晴れていて多少涼しかったので外へ食べに出ました。

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水門。

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遮るもののない青空。

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風に揺れる草。

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グラウンドをトンボで整える野球少年たち。

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丁寧なやきそばパン!

 

追記

中華麺のプロこと妹のエントリーはこちら。
妹の夫は「麺がおいしいね」「パンもおいしい」と褒めてくれたのでデキるやつ。

マルちゃん正麺 ver.豆乳醤油

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鍋に油を垂らし挽肉をドンと落として点火。


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紹興酒がありました。


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シュワッと垂らす。ネギを刻みながら焼けるのを待つ。


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焦げた香りがしてきたらひっくりかえす。


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肉の臭み消しにスパイスがあるといいとおもう。山椒を挽いたけどブラックペッパーや生姜もおいしそう。

肉をほぐしながら好きなスパイスと塩と炒める。


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肉を炒めながら、ネギの白い部分は白髪葱に、芯に近い部分と緑のところは小口に刻む。


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白髪葱は水にさらす。


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肉の一部がカリカリとクリスピーに感じられるようなったら小皿にうつす。

さあ、ここに山椒の香りが移った肉の脂がのこっている。


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すかさずネギを加えて、


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その旨味すべて吸ってくれ!と炒める。

ぜんぜん関係ありませんがここでどんぶり一杯分の湯を沸かしはじめます。


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袋に書いてある分量の半分くらいを豆乳に置き換えて水とあわせて鍋にいれる。

豆乳はすぐふきこぼれるので沸騰に用心する。


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沸いてきたら袋麺をいれよう。


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どんぶりに沸かした湯を移しどんぶりを温めておく。

麺を茹でるあいだにトッピングをすべて揃え、盛りつける順序をシミュレーションしておく。白髪葱の水を切り、白胡麻、辣油を用意する。


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鍋から麺だけ引きずりだし整える。
麺についてきたタレを鍋に加えてスープの味を確認し麺にまわしかける。


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肉をのせ、白髪葱をキュッとつまんで山にして盛ったら、胡麻を散りばめ辣油を二周まわしかける。


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できました。
マルちゃん正麺 ver.豆乳醤油です。

Den.lindleyiを流木につけてP.veitchiiを板につけた

妹とオザキフラワーパークに午前中から乗りこみ、流木と端材の板を買った。

まずはDen. lindleyi(リンドレイ)を流木につける。

デンドロビウムはランの一種です。
ゴツゴツとしたバルブがかっこいいので流木に着生したワイルドな姿にしたいと思います。

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二〇一九年の冬に世界らん展で買ってからずっとビニールポットで育てていた。水を切らすことが多かったけど枯れることもなくタフな様子だった。果たしてなかはどうなっているのか。


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袋麺かとおもった。


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根が水苔をぜんぜん離さないので、隙間にピンセットを突っこみ水苔を引っぱりだしてなんとかほぐした。虫の一匹も出てこなくてホッとした。


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やや傾けて流木にワイヤーで固定した。このまま置いても安定するバランスにした。


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流木の端に穴があいているので、吊りさげることもできるようにしておいた。 
これで花が咲いたらなかなかかっこいいとおもう。今年は根を大きく切ってしまったので花はないかもしれないけど。

 

ここで日が暮れてしまったけど、つづけてP.veitchii(ビカクシダ 'ビーチー')を板につける。


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板、ちっちゃくないっすか。

ビーチーも二〇一八年に買ったままビニポットで育てているけど、白い繊細そうな見ためによらずワガママも言わず綺麗。


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チョコレートかと思った。

ビニールのツルツルした質感を写しとるくらい根がつまっている。ピンセットでつまんで板につけられる薄さになるまでひたすら根を減らす。

たいていの植物は先のほうの根があたらしくて勢いのいい部分なので切っちゃうのはすごくもったいないけど、失ったら死ぬのは株元にちかい部分の根なのでそこを生かすために思いきっていった。


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板に水苔を敷いてワイヤーでぐいぐい巻きつければ完了。

 

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ビーチーと小さい板のバランスがいいかんじにできました。

このあと、白くみえているあたらしい胞子葉もいじけず伸びてきているので、なんとかうまくいきそう。よかったよかった。

面倒

恋人が仕事で忙しくなり部屋で一緒に過ごす生活から遠ざかって二週間くらいになる。とにかく残業がはかどった。明日やればいい業務を前倒しして気の済むまで残業する。恋人を待たせていないと思うと気も咎めない。帰ってきてはトマトを食べて寝る。*1平穏な日々だった。

恋人がいなかったら人生こんなかんじだろうか、と何日か経って思った。こんなかんじだったらひとりでわざわざ生きるのが面倒になりそうだった。

土曜日にひさしぶりに恋人と待ちあわせ。恋人が買いたいものをリストにしているので、あっちへこっちへと午前中から買いものについてまわった。夜、すっかりくたびれてビールでも飲みにいこうとTAP STANDへ。

恋人が途切れなく話す。この二週間は恋人にとってかなりタフだったので話すことがたくさんある。内容はヘヴィーだしなにより恋人がいつもと違う。私はほぼ聞き役だけどボーッとしている暇がない。しかしこういうトーンで恋人が話すのを聞いているのはひさしぶりだ。いつだったかなと考えて、付きあうまえに六本木で映画*2を観て立飲みの焼鳥屋さんで何時間も話し込んでしまったあのときと似ていると気づく。

懐かしいな、それにこういうトーンを恋人が自然に取り戻していることに興奮している。二週間といわずタフな状況はなんらかの形で続くだろうけど、私もそれに馴れて変わっていかないといけない。

ぜんぜん面倒なんかじゃないんだよな、ひとりじゃないと。

 

 

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*1:恋人と過ごす予定で箱で購入していたためひとりで大量消費することになった。

*2:アントマン」だった。