へもか

憶測以上の確定未満

褒められたりはしゃぎたい

 

二月七日

ケーキ屋さんへのんびり自転車を転がしていたら、歩道を仲良く走る二人の小学生男子としばらく並走することになった。二人の会話を聞きながら信号待ちで抜きつ抜かれつしていたが、踏切で完全に並んだ。

ひとりが宣言する。
「じゃあ、野菜な」
「よし、ズッキーニ」
「ニラ」
「らっきょう」
「ウンコ」

はやい。さすが小学生男子、四単語目でもうウンコ。ウコンでもよかったのではないか、と思ったけどそうするとンになる。しりとりに負けてしまう。そうか、もうウンコしかない。ウンコが野菜だって言うなら今度からおまえのサラダにウンコいれるからなって。たのしそうだった。

 

二月十九日

仕事の関係でずっと髭を剃ってしまっていた夫の顎にひさしぶりにラフに髭がはえていた。ひさしぶりだったので、え、こんなに髭かっこよかったっけ、とどぎまぎしていた。あまり長時間見つめるとバレて剃られてしまうかもしれないので、視線をスッと外してちょっとずつ見ていた。

 

二月二十一日

何年もかけて設計を担当していた商業施設の室内緑化の工事も大詰めを迎え、事業主立会いの完了検査を実施していた。とくに複数フロアのエスカレーターが交差する大きな吹き抜けは見せ場で、年中なにかしら花を咲かせてほしいとリクエストされた華やかな空間。

検査時に葉しかなかったらまずい。とっさに見渡すとあちこちでスモークツリーがふわふわと揺れて、アガパンサスが薄紫の大きなまるい花をポッポッと空中に突きだしていた。よかった、十分だろう。

事業主もニコニコでやっぱり植物があるといいね。ええ、そうですよね。かわいいですよね。とくにこのふわふわが気に入ったな。スモークツリーといいます。いいねえ。いいねえ。

と、和やかな完了検査が終わったところで目が覚めた。私が考える理想の完了検査だった。実際の完了検査は問題箇所の指摘確認の場でただねちねちやられるだけ。できたもので褒められたりはしゃぎたい。その欲望をそのまま夢に見てしまった。