へもか

憶測以上の確定未満

こわがりの話

実のところ、私はかなりのこわがりだ。対象は幽霊とか呪いとかそういう類だ。鼻で笑われそうだけど本気だ。本気でこわいので心拍数が上がってしまう。霊感が強いのかというとそういうのはゼロだ。これに関しては逆に幽霊がおびえるんじゃないかってくらい鈍感だ。つまりそういう経験はまったくない。強いていうなら、昨夜ひさしぶりに恋人がいなくて一人で部屋のシャワーを浴びていたとき。たまたま直前にこわい話を読んでしまったのでこわい気分だった。シャワーを浴びながらも目は片方ずつしか閉じないようにして扉のほうを見張っていた。なぜ扉のほうなのかは自分でも分からない。幽霊ならば壁でも天井でも床でも好きなところから襲撃が可能だとおもうけど、とにかく扉だ。見ていると扉のすりガラス越しに黒っぽい影がじっと床にうずくまっている。いつもならあんな位置に黒っぽいものは置いていない。こわくて身体を硬直させながらも全身洗った。扉をあけるときがいちばんこわいが、いちばんの防衛は気づいていないふりが良いとおもっている。なんかそういう異常な事態を受け入れた姿勢を見せたら実現してしまう気がするので。黒っぽいものは風呂にはいるまえにおびえた私が妙な位置に脱いだままにしたパンツだった。ほんとうにこわかった。