へもか

憶測以上の確定未満

少々の未来

五月二十四日

鏡のまえで顔のほくろを指で隠していくとほくろの多さにあらためて嫌気がさす。あっても許せるほくろはどれだろうとかわるがわる指を浮かしていると、顔にひとつしかないほくろは急に個性を主張しはじめる。

唇のうえにあるほくろは口が軽くて役に立たなそうな人物に見えるし、鼻のしたのほくろは胡散臭く見える。唇のしたに添えられているほくろは慎ましやかな雰囲気があってちょっといい。よく見たら鼻柱の近くにもほくろがある。やたら多い。

鏡から顔を離して手をどかしてみると、それぞれ勝手な主張をしていたほくろの個性が消えるのが分かった。

多くてよかったのかもしれない。少なかったら望まない情報を発していたのかもしれない。自分の現状に自分で納得することが増えた。加齢か。

 

五月二十六日

恋人の過去の恋人のことをどう思っていますか。

私は、じつはお会いしたことがあって、端的に言うと、いまでも憧れを感じているひとです。どういう別れかたをしたのか聞く必要があるとも思えず聞いていないので何も言っていないけれど、恋人の隣にほんとうにふさわしい素敵な方でした。上品でやわらかく、才覚と度胸があり、主張をしない。それに対して私は、と思っています。

逆に、私の過去の恋人(しかも二人も!)に会ったことがあるはずで、どう思っているんでしょう。なにも思っていない気がしてきました。

過去より、現在と少々の未来を思っていたいですね。