八月十五日
実家でくつろげなかった。
母が私をもてなそうとする。どうしたらいいか分からなくてぎこちなくなって「そんなこといいよ、いいよ」とあれこれ遠慮した。
かえって悪いことをした。まえはどうしていたんだっけ。
八月二十三日
新入社員向け研修の講師役で支店に行かなくてはならず、いつもより一時間くらい早く家を出るため朝から時間がなかった。
残っていたパンを掴んで冷蔵庫をあけて取り出したフムスとチーズを挟んだ。タンパク質ばくだんですね。
パートナーがいないと生活があっというまにだらしなくなってしまう。
八月二十七日
なぜかタフぶってしまう。
仕事を終えて駅に着くと、雷と雨が競い合うように激しく降りそそいでいた。出口で傘を持ったひともほとんど外へ出ずに跳ねまわる水飛沫と閃光から距離をおいて様子を見ていた。軒先から見上げて雷と目を合わせたら打たれると思っているようだった。私は改札内のコンビニまで引きかえして傘を買い、出口のひとを搔きわけて傘をポンと広げて一緒に買ったコロッケを食べながら部屋へ向かった。タフだから。
かつて注文してみたら辛すぎたカレー(メニューに激辛と書いてあった)も「たしかに辛いけどうまい」と残さなかった。タフだから。
賞味期限の過ぎたアヤシイ食材も匂いで問題なければ食べる。タフだから。
消化器官はタフではないので数時間で腹部がごろごろする。
タフぶってしまう、というより列挙してみるとこれは正直なところタフではないのではないだろうか。私はいったい何をやっているんだ。ぜんぜん分からないけど、生命の存在に理由がないようにタフぶることにも理由はない。それだけは分かってほしい。