へもか

憶測以上の確定未満

食事と生活 3

五月二十八日。

謝る。謝らない。謝る。謝らない。交互に出る足にまかせて相手の家の最寄り駅まで行ったけど、「相手も謝罪を受け入れられる状態ではないだろう」というもっともらしい言い訳になびいてしまい何もせず帰ってきた。

夕食は出掛けるまえに下準備しておいたゴーヤーチャンプルー。夏らしくなってきて美味しそうなゴーヤーがスーパーに並ぶようになってたのしみにしていたゴーヤーチャンプルー。水切りのすんでいる豆腐からちゃっちゃと炒める。つづいてゴーヤー。で、豚肉。溶いた卵をまわしいれて10秒待って大きく混ぜたらできあがり。量の加減が分からなくてたくさん出来てしまったけど、フライパンに残ってしまった分は明日の弁当にすればいい。

頬張ってから気づいたけど味付けを忘れていた。塩を取りに立ちあがろうと思いつつ、箸を構えたままゴーヤーの苦味だけをまとった豆腐を咀嚼しながら一人でじっとチャンプルーの皿を見つめていた。ふと、いつまでこんな生活をするんだろうと思ったら心細くて心細くて涙が出た。

塩を振ればおいしく食べられるんだと、泣きながら食べた。

 

五月三十一日。

週末にほとんど初対面の人とゆっくり話す機会があり、恋人がいると言うと「どこが好きなんですか」「なんで好きなんですか」という、まあ月並みで当たり障りのない質問をされた。それであらためてなぜだろうと考えたのだけど、簡潔なこたえにならなかった。

私は舞茸が好きだけども、その理由なら香りが良くシャキシャキとした歯ごたえが美味しいからですねとすぐに答えられる。すらすらと舞茸のことは話せて恋人のことは話せない。嘆かわしい事態ではないですか?

舞茸は私が一方的に選ぶだけの関係だけど、恋人は互いに一方的なものではないから、仕方ないのかもしれませんね。

 

六月一日。

先日、近所の天ぷら屋で鶏レバーのソース漬けというものをいただいた。あ、これなら私でも作れると分かったのでさっそくスーパーで鶏レバー(しかも20%オフになっていたもの)を購入した。

とっても安いから美味しくできちゃったらこれは定番だなァ、と良い気になってトレイの中身をまないたに広げたらコロッと弾力のある塊がレバーをズルリと引きずりながら登場した。まさに臓器。

まずはまないたを離れ、両手でiPhone持ちググった結果、鶏のレバーはハツ(心臓)とつながっているもので間違いないそうだ。え、ニワトリの構造どうなってんの、と気にならないでもなかったがこれ以上知ることは調理に支障を及ぼす。私はすみやかにまないたに戻り、心と興味を殺し、食材として切った。

最終的に鶏レバーはおいしい甘辛煮になりました。ときには興味を殺すことも必要です。