へもか

憶測以上の確定未満

遊泳禁止

 

 

どうも、rintaroです。

とくに釣り道具も持たない女がひとり川に向かっていくのは一体どういうふうに見えるだろうな、と思いながら神社の脇を抜ける。

会社近くのその神社の脇の道を下っていくと細い川がある。
ちょろちょろした流れの土っぽい川で丸太を並べただけの橋が架かっている。丸太を渡って坂を登ると一面に岩場が広がる。

岩場の向こうに黒色の大きな川が流れているのが見える。川岸の良さそうな岩を品定めしながら越えられる高低差の岩を選んで進んでいく。何をしに来たわけでもないけど、川面に近くてゆっくり座れそうな岩がいい。

ザーッという水の音が大きくなってきて肌に細かい水飛沫が張りつくのが分かる。

水音に急かされるように目当ての岩にすこし強引に飛びおりる。遠くに釣り人が見えたけど座ってしまえば岩で遮られて気にならない。日差しで温められた岩が熱っぽい。靴を脱いで靴下も脱いで、まさか川に落ちることがないよう岩に慎重に靴を据える。冷たい川に足をひたして本とピーナッツの袋を取りだす。

たぶん川が黒いのは底が分からないくらい深いからで、しかも流れが急だからここは遊泳禁止なのだ。黒い水が白い泡を飲みこんでは吐いて流れていくのを見て、よし、泳ごうなんてだれが思うんだろう。

わざわざ来たのに川遊びをすることもなく本に没頭することもない。考えごとがはかどるということもなく、何か思い浮かんでも意識が像を結ぶまえにちりぢりに流れていってしまった。