へもか

憶測以上の確定未満

【二月の読んだ本】コンセプトを食べる 他

二月の読んだ本(18冊)

今月はよく読みました!
すべて読んだのは5冊だけで、あとは斜め読みです。

今月のオススメは「毒薬の手帖」と「会計の世界史」です。

「à tes souhaits! 」もよかった。56のケーキやデザートのレシピは読んでいるだけでもおいしい。そのコンセプトや狙いを知って食べるたのしみが増しました。

 

直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN

すごく個人的なものである直感を他人と共有できる論理に磨きあげるまで、四段階のサイクルに分けて説明される。どこで自分が詰まっているのか、マップで見るように自覚できるようになった。

漠然とした直感をうまく扱いたいものの現状は何も試行錯誤できていないので、直感を考察していくヒントがあればいいなとおもって読んでいた。そもそも直感自体の精査はしなくていいのかもしれない。そこでは考えずにもっと手を動かして、直感の解像度を上げていくうちに振るいわけられる。

仕事では何気なく、イメージ写真をあつめて、キーワードを抽出してコンセプトにまとめる、とやっているので、

視覚的な情報は思考を発散させる
議論を収束させるときは言語情報

という話もおもしろかった。意識的にやりたい。

表現はゴールではなく、そこから有益なフィードバックや気づきを引き出し、次なるバージョンアップへつなげていくための手段である

分かっていても表現を成果物として大事にしてしまうので、両の手の指の背にタトゥーで刻みたい。手を動かせとか、表現とはなにかとか、まさかビジネス書に言われると思っていなかった。

 

 

意識と感覚のない世界――実のところ、麻酔科医は何をしているのか

麻酔の歴史と麻酔科医の日常が同時に語られていく。日々の手術は患者の命や痛みを左右する緊張や発見の連続で読み飽きない。

プロフェッショナルとしての勉強と努力は欠かさず、患者や患者の家族の素人の言葉にちゃんと耳を傾けて尊重する。言葉にしちゃうとありがちなんだけど、自分の延長にも存在するちゃんと生身の目標として感じられる。

麻酔が導入されてから、意識が戻る覚醒時まで、患者に時間の欠落が生じる。この時間に記憶が脳に刻まれているとすれば、麻酔の体験が記憶の形成を妨げるのか、あるいは記憶の取り出しを妨げるのかで意見が分かれている。

どんな仕組みで麻酔が効いているのかは麻酔科医も知らない、不思議な話だとおもう。

 

 

毒薬の手帖 ―クロロホルムからタリウムまで 捜査官はいかにして毒殺を見破ることができたのか―

ニューヨーク市監察医務局をたちあげたノリスとゲトラー、ふたりの男の話。

禁酒法世界恐慌の時代、腐敗しきった監視官制度を破壊し新たに監察医制度を立ちあげる。なけなしの予算を削る市長とのバトル、毒の検出を検討するため何十パターンも繰りかえされる血と組織のウェットな実験、法毒物学が世論からの信頼を勝ちとるまで、ノリスとゲトラーのたゆみない献身が泣ける。

科学的な究明に終わらず、それをいかに社会に広く理解させて制度として確立していくか、社会との苦労を描いているのがよかった。

まるでドラマのようでおもしろかった。おすすめです。

 

 

なぜ、あの飲食店にお客が集まるのか

バーのマスターが20の飲食店にインタビューする、だけだった。なぜあの飲食店にお客が集まるのかについて結論がなく、インタビューのプロではないから掘りさげも弱い。結論がないので全体に大きな流れも生まれず店ごとに話が切れる、せいぜい吉田類の酒場放浪記

おもしろかったのは喫茶店の客の回転率の話。利益のため回転率を上げたい店の大原則とゆっくりと過ごす時間を求める客の要求はそもそも相容れない。それをコーヒーハウスニシヤではそろそろおかえりくださいって直接客に言うそうだけど、クチコミ等でも評判はよく客は満足している。オーナー曰く、きちんとした格好をしてサービスをしていれば通じるらしい。

ほんとうだろうか。確かめるために行ってみたくなっちゃった。

 

 

宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃

数学界に疎まれている異端の集会にまちがって参加してしまった気分。あまりの不安に弟(うちの数学の権威)に著者を信用していいのか聞いた。

宇宙際タイヒミュラー理論(IUT理論)を一般のひとにもわかるように説明している本です。本来IUT理論は500ページ超の論文ですが(世界をまるごと記述するつもりか?)本書は300ページ。お得じゃん。私は数学は得意ではないがこれだけは間違いない。

まだ読みかけ。

 

 

新装版 殺戮にいたる病 (講談社文庫)

ミステリーリハビリの2冊目。

叙述トリック一本でやり切る腕力はきらいじゃない。人物描写がぎこちないまま殺害描写ばかりコッテリしているので、物語の生々しさより血みどろの衝撃を与えてやろうと舌なめずりしてる著者ばかりが生々しい。

自分でも無意識のうちに形作っていた心のなかの映像が勝手に利用されたと分かった瞬間のヒヤリとした後味が良かった。

 

 

悪について誰もが知るべき10の事実

論文や実験をもとに十種類に分けて悪を突き詰めていく。小児性犯罪者や動物虐待の話は読むのもおぞましい。その悪をどうやって解決していけばいいのか。

映画でダークヒーローが事情や環境に形成されていくように、巨大な悪は段階や複数の条件が揃うことでつくられると考えられる。人を人扱いしなくなる、共感の欠如、目的のための手段の正当化等。

それに対抗するには、悪を自分から切り離さないこと、自分の延長に存在していると知ることだと著者はやさしく希望を語ってくれるけど、私には人間は生きながらの悪で、さらに社会は人間を悪に仕立てながら悪から目をそらす便利で邪悪なシステムだとしか思えなかった。

大きな集団に属することは、幸福を破壊するリスクだ。

 

 来月も読むぞ。