へもか

憶測以上の確定未満

食事と生活 7

七月十五日

美味しそうなパンを買って帰ってきた。
パンを切るたびに私は大学の友人を思い出す。

大学時代のヨーロッパ研修旅行でポルトガルだかスペインだかでランチの席についたとき。大ぶりのパンとナイフが配膳され、テーブルの反対側では早速パンを切り分けようとした同じ大学のギャルたちがナイフを押し当ててパンを潰してきゃあきゃあ騒いでいた。

恥ずかしかった。同じ日本人だと思われていることが恥ずかしくて耳が熱くなった。

固まっている私に、隣にいた友人がナイフを前後に滑らせるように動かせばパンは潰れないと教えてくれた。ざくざく切り分けられるパン。ギャルたちもまねたので最後はみんな綺麗なパンを食べた。

 

 

 

七月二十一日

なかなかベッドから起きあがる気になれなくて寝返りをうったところで、すでに起きていた恋人と目があったのでおはようと言った。

パンを焼いたら食べる?と聞かれて食べると答えると、恋人はグリルを開けてパンを入れたり出したり、グリルを閉めてかがみこんだと思ったら冷蔵庫から何か取り出したり忙しそうで、またうつらうつらしてきた。

できたよと呼ばれて目をあけるとふつふつと焦げたチーズとトマト、トマトの下からケールの緑が覗いているトーストとコーヒーがいた。噛むとケールがクシャッと不思議な歯応えで千切れて、チーズの乳くささとトマトの酸味がおいしかった。

土曜なのに午後から会社にいかなくてはならない。やれやれ。

 

 

 

七月二十九日

恋人が料理をよくするようになった。食ドキュメンタリーの見過ぎだ。

一緒に食ドキュメンタリーを見たけど、畜産による環境汚染は深刻です。まあ、どちらかといえば肉を食べないことによる体調の変化を(そんなものがあるとすればだけど)個人として体験してみたいなと思った。

そういうわけで六月末頃から揃ってゆるい菜食主義になってしまった。菜食主義というのは外食すると薄い味付けをされたわずかな量の料理やらなぜか肉を豆で再現した料理やらを食べさせられそうで、家で食べたい野菜を料理したほうがよほどよい。必然的に料理をする回数が増えた。台所で並んで料理をするのはとても楽しい。すっかり料理をするようになった恋人と料理には勘というものがあることが共有できてうれしい。

料理というのは繰り返すほど食べることも楽しくなって料理の引き出しもどんどん増える、すごくたのしい作業なんですよね。