二月八日
恋人が新幹線の事故に巻き込まれて死んでしまう夢を見た。事故の知らせを聞いた直後は普段通りに仕事へ行った。平日も、休日もこれでひとりか、と漠然と思った。半年ほど経った頃、昼間のホテルのロビーで恋人が好きだった映画監督に偶然会った。窓からの陽射しでまだらに白く光る絨毯を踏んで、監督に近寄って「すみません、急に、私の恋人があなたの映画をとても好きなんです」と話しかけた。話すうち監督は「何が言いたいのかな」って怪訝な顔になってきて、あ、私は恋人のことを人に伝えられないって気づいたら喉がグーッとこわばって涙が出た。困った顔の監督に謝り、嗚咽をもらしながらしゃがみこむ、私ってこんな泣きかただったろうかと疑ったところで目が覚めた。
現実では恋人が生きているので、現実は良い。
時刻は9時54分だったので会社に遅刻した。
二月九日
乱獲されるポケモンを人間から守るレンジャーになった夢を見た。
二月十一日
ほとんど日も沈みかけた頃にバスで出かけるのはわくわくする。
子供の頃、父に連れられてクラシックのコンサートに行ったのはバスではなかったか。妹と弟がいるので母は家に残って、父は一人で行くのが寂しかったのか私を連れていった。ほとんどはオーケストラをBGMに寝ていた気がするが、父とおめかしして出かけるのは一人前になったようで嬉しかった。
今日は恋人が良さそうな居酒屋を見つけたというのでわくわくしながら向かっている。