へもか

憶測以上の確定未満

信じていながら

図書館で借りた「プリズン・ブック・クラブ--コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年」を読んでいる。イギリスの刑務所で受刑者たちと読書会をひらくおばあちゃんの手記。

その読書会ではノンフィクションや手記が多く読まれていて、私の読んだ本とはほとんど重ならない。せいぜい「ライ麦畑でつかまえて」と「夜中に犬に起こった奇妙な事件」と「レ・ミゼラブル」くらい。

過酷な環境に人物が歪められたり乗り越えたりしていく姿に共感してほしくて、おばあちゃんたちはそういう感動的なノンフィクションを多く受刑者たちと読む。それってなんだか説教くさくてどうだろう。ほんとに自分の手で人を殺した人とどんな本を読んだらいいんだろう。何がおすすめできるかな。

そういえば、私はあまりノンフィクションやひとつの事件に関する手記などを読まない。ひとつの視点だけで物事をジャッジせざるをえない状態に置かれるのが不快だし、フィクションに引き起こされた悲しみや怒りなら虚構という薄皮一枚の境界を残せるけど、現実にもとづくものだとしたら、その感情との距離感をかんちがいしてしまう気がする。その感情が正しい、と感じてしまうような。

でもだれが現実を事実のままに正しく記録できるだろう。日記の一日ですら編集されている。逆に虚構だからこそ存在しうる怪物のように純粋な感情が私の感情とガッチリ結びついてしまうこともある。

私は疑うのが好きなのかもしれない。かもしれないって、この記述でも疑っているみたいになったけど、きっと断定しない不確定な状態に物事をゆらゆらと置いておくのが好きなのだ。憶測以上、確定未満。

そうだろうし同時にそうでもない。信じていながら信じていない。