へもか

憶測以上の確定未満

時には昔の話を

昔話をします。

じつはいまの恋人とはじめて会って握手したときは握手しながら、ああ、とんでもない人と出会ってしまったと思った。相手はそれはもう完璧だった。表情も振舞いも会話も、すべて完璧で、ああ、しまったと思った。長くは話さなかったけど話さなくてもとんでもない人に出会ってしまったと思っていた。あまりに完璧だったので、当時おたがいそれぞれパートナーがいたなんていう状況以前に、この人とわたしは釣りあわないからおつきあいすることなんてありえないし、一生、完璧な人と出会ったのにその人とは良くて友人という接点だけで生きていく、私の人生はそういう人生になったのだと、一瞬で惚れてその直後に人生がいままでと違うものになってしまったことを感じながら、握手をかえしていた。

これから先、ぜったい手に入らない人生を感じながら生きていくんだと分かったらもう笑うしかなかった。

あのときの出会った喜びと同時に感じた絶望を一瞬で受けいれて笑った自分にいまでもゾッとするのです。