さあ、たったの4ステップです。もとになる文を準備しましょう。
1. 文をひとまとめの形容詞にする
文をドカッとまとめて名詞に乗せます。
例:
私は、私にたくさんの味方がいることに自分の誕生日が来ないと気付けない。
たくさんの味方がいることに自分の誕生日が来ないと気付けない私は、
前後の文の主語が同一の場合はこれでひとつにまとめましょう。このとき主語と動詞が離れていきますが、宇宙の端と端に置いちゃうくらいの気持ちで離します。大丈夫。滝沢カレンはむしろ近づいています。
2. 文をつなげる
"〜つつも"、"〜ながら"、"〜けど"、"〜にして"、"〜という"、"〜ので"。
ありとあらゆる接続を活用し、ひたすらに句点を減らし、文をつなげます。分かりやすさとかいうものはべつの世界のことだから大丈夫。
3. すべての言葉を装飾する
すべての単語を装飾します。
さらにその装飾語をあまり話し言葉では聞かない表現に置きかえ文をより長くします。
そのとき語順や助詞を整理したくなりますが、思いついたそのままの語順や助詞であることでより滝沢カレンらしい迷宮じみた文章に。
a. 副詞をかならずプラス
例: 不思議な → なんとも不思議な
b. 擬音をちょっとプラス
例: 行き着いた → ノソノソと行き着いた
4. オプションで調整する
モノマネのセオリー。最後にだれでも分かる特徴を加えます。あくまで相手には丁寧に、品のある、というのが重要なポイントです。
a. 唐突な断定形を混ぜる
例: でしょうが → だろうが
b. 文末の語りかけを惜しい熟語にする(言いたいことは分かる)
例: お楽しみに → 覚悟しといてください
c. 無生物主語構文を導入にする
例: 本日は晴天です → 太陽が惜しみなく大地を照らします本日は
d. 音の一部が同じだけで意味はまちがった慣用表現に置きかえる
例: 何の考えもなく座る → 何食わぬ顔で座る
e. まちがった接続助詞、副詞に書きかえる
例: 仕事で → 仕事さながら
f. オーバーにする(そこを?!みたいな部分を)
例: 声を大にして → なにもかも大にして
このエントリのために滝沢カレンのinstagramをもとにスプレッドシートを作成していて特徴的だと思ったのが、動詞、副詞、慣用表現の豊かさ。同じ言葉ばかりが頻出するというより語彙は豊富だった。ただ豊富すぎて装飾過多で読みにくくはある。
動詞の場合は、動きをふたつ重ねた動詞を用いるのが好きみたい。たとえば「動く」は使わない。「動く」に「まわる」を足した「動きまわる」を使う。
副詞や慣用表現も豊富に使っているのだけど、残念ながら70%くらいの頻度(体感です)で意味を間違えて使っている。
おそらく本来の意味を知らないまま、音の似た他の知っている言葉の意味から推測して「そうじゃないかな〜」という感覚で用いている。この音の似た言葉と間違えるってのがかなり面白いと思ったんだけど、なぜそんなことをこの頻度で起こすのか、その理由は彼女のあの言語で発信されるのみならば解明は困難を極めるだろう。類似事例はあるのか。
副詞や慣用表現などの装飾で意味が間違っているだけであれば、骨子は伝わるのだけども接続助詞を独自のルールで用いることがあり、そのときは意味が一瞬迷子になる。あの中毒性は接続助詞の誤用によるトリップ感に宿っているのではないか。
またこれも確かではない(というかすべて確かではない)のだけど、彼女にもコンディションというものがあるらしくすべてのポストにポエティックな表現が見られるわけではない。ちなみに彼女のポエティックな表現においては無生物主語構文にとくに触れたい。
無生物を主語にするときはとくに筆が乗っているのか、副詞や慣用表現がより暴走している場合が多い。おそらく、普段は、いちおう慎重に、丁寧に、副詞や慣用表現を用いているのだろう。そう考えると彼女の不思議な言葉をいちいち愛しく思ってしまうという気持ちをお分かりいただけるでしょうか。
こちらの解析がおもしろかったので