へもか

憶測以上の確定未満

鳥が飛べなくなった

実家の鳥が飛べなくなった。

飛べなくなったのは年始のことで今は快方に向かっているからもう笑い話だけど、実家で飼っている鳥(五歳になるオカメインコ)が飛べないと最初に知らされたときは冗談かと思った。しかし母の真剣な様子だとどうやら本当に飛べないらしい。鳥が、飛べない。おそらく怪我をしたんだろう。翌日には実家に帰る予定だから状況を細かく聞くより会ったほうが早い。体力を消耗させないよう暖かくしてあげて、と伝えてはみたけど鳥の飛べない様子というのがあまりうまく想像できなかった。

実家に帰ってみると鳥は元気よく歩きまわっていた。タカタカタカタカッとリビングの机を爪で鳴らして捕まえようとする人の手を素早くかいくぐって、得意気に歩きまわっていた。そうして歩いて端まで来たらスッと小さくかがんで机の端を蹴る。いつもなら自分のカゴまで飛ぶのだけどあきらかに飛びあがるための羽ばたきが足りず、着陸のための減速もできず、翼を広げたまま机からただ滑空し床にパサッと落ちた。完璧な不時着。

びっくりして翼がひらいたままの鳥を急いで拾って手で包むように撫でつづけた。ぐったりと力が抜けきって撫でられるがまま頭が羽に埋もれていってしまう。撫でるほど丸くなっていってさながら豆大福。ショックで放心しているとしか言いようがない。どう見ても落ちこんでしょんぼりしている。

人は、鳥がしょんぼりしていたらこちらも悲しくなってしまう生きものです。

真剣に観察したけど外傷はなさそうだった。家族で話しあいのすえ、飛べなかったことによるPTSDだろうと結論づけた。

そこからは放鳥中できるだけ飛ばさせないように鳥の望む場所に手で運んだり、また不時着を繰りかえしてしまった時もすかさず拍手(爆発的な拍手をしてはいけない、鳥を驚かさない程度の柔らかな拍手)をしながら拾いに行き「いいよ!飛べてる!飛べてるよ!」と褒めたり、妹とキウイやカカポの動画(エミューやダチョウは走行能力が強調されるため不適切であると思う)を見せたり、それでもやっぱり落ちこんでいたら鳥が飽きるまで撫でながら「いいのよ、大丈夫よ、飛べない鳥もいるのよ」と口ずさんで鳥を支えた。

結果、まず着陸のための減速ができるようになった。

これが出来た途端、鳥は若干得意気であった。それまでのようにひどく落ちこむこともなくすぐにエサをポリポリと食べた。

そして、ついに鳥が飛んだと母から連絡があった。

滑空ではなくちゃんと飛んだらしい。鳥が飛んだだけでこんなに嬉しかったのは鳥が雛だった時以来だ。

うちの鳥は雛の頃にレースカーテンのおもしの鉛を噛んで重金属中毒で死にかかっている(住宅メーカーのことは憎んでいます)ので将来的にどんな体調不良が出てもおかしくないと獣医には言われているけど、年始からほんとうに心配した。

飼っている鳥が飛べなくなったときはご参考ください。

鳥も突然飛べなくなることがあるんだから人もいろいろあるよね。

あけましておめでとうございます

あけましておめでとうございます。

2017年。とてつもなく未来にきてしまったものですね。
10代の頃の自分からみたらもはや私も疑う余地のない中年でしょう。積みあげてこれたものがあるかなと見渡してみても何も思いあたらず不安な気持ちになりましたが、尊敬する友人たちとの交流があることを心強くそして嬉しく思います。

その時間に報いることができるよう日々努力する年にしましょう。

今年もどうぞよろしくお願いいたします。

噂話

週末には恋人と会って普通の休日をのんびりと過ごせることが嬉しくて、付きあいはじめの頃のような浮かれた気持ちでふわふわしている。

週末の食事に何を作ったら喜んでもらえるかなって、会社の昼休みに考えている。

月曜の会社の忘年会はとても疲れたけど、私の採用が決定してから配属されるまでに部長が「すごい子が来るんだよ〜」と何度も嬉しそうに噂話をしていたということを隣の課の方から聞いてどんなに嬉しかったか。

おそらく「すごい子」ではなかっただろうし、すぐに期待に応えることはないだろうし、そのまえに何度も失望させることになるだろうけど、いつかそんな部長の気持ちに報いることができるといいな。

自分のやりたいことに集中できる今がありがたい。

部屋に帰ること

今日は転職した会社に初出社だった。

定時退社をさせてもらい電車に乗って降りてマンションの扉を開けてコートを脱いで鞄を置いて、驚いた。

朝から仕事だけして、ひとりきりの部屋に帰ってくることが、こんなにさみしくてつらいとは思わなかった。あれ、みんなどうやって耐えているの、これ、って戸惑った。

二十代前半の、就職してひとり暮らししたときはぜんぜん違った。自分で稼いで暮らしていることが誇らしくて、部屋にひとりでも自分だけの空間になっていることが楽しかった。仕事が何一つ分からないことは不安だったけどそれ以上に興奮していた。

初日の仕事には充実感がないせいもあるだろうと思うけど、こんなに違うとは。しみじみ。明日は部屋に帰ってきたらどんな気分だろう。今日より良いといいな。

男性の色気に関する短い考察

先日、某ヒップホップMCのDJイベントに行ったときのこと。

伸びた前髪がひたいにかかっているところがやたらと色っぽかった。なぜこんなことがこんなにぼくの心のやらかい場所をいまでもまだ締めつけるのか。

すべすべとした白い陶器に黒っぽい糸が垂れさがっていてもそこに色気があるわけもなく(正直に言ってひたすら意味がわからないだけだ)、図として抽象化されても共通する性質や特性を見出すことは不可能であることから、光景だけが心を捉えているのではないと考えられる。

ただ場の一瞬の熱狂のためだけに、集中して我を忘れている、ひたむきさみたいなものが、たぶん色っぽかったんだと思う。坂口安吾の「続戦争と一人の女」に書かれていた覚悟を決めた男がこんなに可愛いなんてという文を思いだし膝を打った。そうだ、他の選択肢には目もくれず平然と投げうつ覚悟がきっと男性の色気の正体なのだ。

以上です。ご清聴ありがとうございました。

今夜、寝つけるだろうか。

どうも、rintaroです。

明日六年半勤めた会社を退職します。

入社後一年目に大きなリストラがあって平社員として一人残された私の仕事内容は大きく変わってしまい、それから給与の支払が遅れることもしょっちゅうでいいかげん潰れるかもなァと思いながらやっていて気づいたら六年目。

やりたかった仕事内容でなくなっても惰性でぬるぬると勤めていたから、転職先では苦労することになると思う。六年半は長かった。それでも造園を続けられることや今度こそ設計者として働けることは楽しみにしている。

そんな面接で話したような理由とはまったく別で、東京で働けることが、ただただ嬉しくて仕方ない。

すごい。好きなひとの近くで暮らせる、なんてなんて嬉しいんだろう。

今夜、寝つけるだろうか。